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25. 水星の近日点移動 〜Pericentre Shift〜

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提供:NASA

水星

 

ぜんぜん青くないんだね。しかもアッツアツだし。水とは。

 

どうも、ぐちぐち言ってる宇宙少年です。

 

前回は地球みたいな惑星が、太陽の周りをグルグル回る物理(ルール)についてお話しました。

utyuu-syounen.hatenablog.com

今回はこれの続きというか、進化系というか、そんなお話をしますので

ぜひ読んでちょ〜 ↑ 

 

さてさて、今回は

水星の近日点移動

についてお話します。

 

何やねんそれ。って感じですよねわかる。説明します。

 

まずは宇宙物理を知らない方むけに、ざっくりと言葉で説明いたします。

後半は一般相対性理論をある程度学んでいる方むけの説明をいたします。

 

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以前の記事で、惑星はずーっと同じ軌道を描いて運動しているとお話しました。

ごめんなさい、ちょっと嘘こきました。

でもほんのちょっとだけよ。許して。

 

基本的に決まった軌道を運動しているのは確かなのですが、

上の写真の水星、実は一周するたびにすこーしずつ軌道がずれちゃうというが存在していました。

以下の図のようなイメージですね。

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( https://ja.wikipedia.org/wiki/近点移動 )

惑星が太陽に一番近づく青い点近日点です。 

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前回説明したように、太陽の重力で運動する惑星は上図の緑色の楕円のように、一つの楕円軌道にそって運動し続けるというお話でした。

水星以外の地球や木星などはこの緑のような軌道を運動しているのですが

水星は赤い線のように楕円がグルグル回ったような変な運動をすることが知られていました。

これが謎でした。

物理(ルール)に従ってないんだもん。 

物理学者は太陽以外の惑星からの重力の効果を考慮して計算したけど

どーしても、説明できないズレがありました。

 

これが『水星の近日点移動の問題』でした。

 

困った困った。

 

そこで登場したのが、みなさんご存知

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アインシュタイン 

 

彼が一般相対性理論を完成させたことにより、この問題は解決したのです。

 

この問題の答えは

太陽やブラックホールの近傍だと重力が強すぎて

ふつうの物理法則が狂っちゃう

ってことだったのです。

その効果も考えたルールが一般相対性理論です。

 

一般相対性理論が完成したから

生活には欠かせないGPSなどが生まれたわけです。

 

アインシュタイン グッジョブ!

 

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以下、一般相対論をある程度学んだことのある方向けの説明です。

 

 

 

球対称性を持つ時空の計量の一般的な形はシュヴァルツシルト時空で表される。

\displaystyle ds^2=-\left(1-\frac{r_s}{r}\right)c^2dt^2+\left(1-\frac{r_s}{r}\right)^{-1}dr^2

\displaystyle +r^2(d\theta^2+\sin^2\theta d\varphi ^2) \tag{1}

ここで

\displaystyle r_s\equiv \frac{2GM}{c^2} \tag{2}

シュヴァルツシルト半径である。この面は物理的な特異面ではないが、外部の観測者にとっては観測可能な領域を分断する境界面となっている。それゆえにこの境界面のことを『事象の地平面』という。これがブラックホールの考えのもととなっている。

続いて、シュヴァルツシルト時空における質点の運動について考える。球対称の重力源を考えているので質点の運動は一つの平面内に限られる。その平面を \theta = \pi / 2 とすると、線素は

\displaystyle ds^2=\left(1-\frac{r_s}{r}\right)c^2dt^2-\left(1-\frac{r_s}{r}\right)^{-1}dr^2 +r^2 d\varphi ^2 \tag{3}

と書け、ラグランジアン

\displaystyle L=\frac{1}{2} mg_{\mu\nu}\frac{dx^{\mu}}{d\tau}\frac{dx^{\nu}}{d\tau}  \tag{4}

より

\displaystyle L=\frac{m}{2} \left( c^2\left(1-\frac{r_s}{r}\right)\dot{t}^2-\left(1-\frac{r_s}{r}\right)^{-1}\dot{r}^2 -r^2\dot{\varphi}^2 \right)  \tag{5}

となる。ここで、\dot{A}\equiv dA/d\tau である。

上のラグランジアンt を陽に含まないので、ラグランジュ方程式より

\displaystyle \frac{\partial L}{\partial \dot{t}}=mc^2\left( 1-\frac{r_s}{r}\right)\dot{t} \equiv E(=\rm{const})  \tag{6}

\displaystyle \frac{\partial L}{\partial \dot{\varphi}}=-mr^2\dot{\varphi}\equiv -J(=\rm{const})  \tag{7} 

が得られる。線素(1)の両辺を d\tau で割ると

\displaystyle c^2=\left( 1-\frac{r_s}{r} \right) c^2 \dot{t}^2 - \left( 1-\frac{r_s}{r} \right)^{-1} \dot{r}^2 -r^2\dot{\varphi}^2  \tag{8} 

と変形でき、これと先ほど定義した定数 (6), (7) を用いると

\displaystyle E^2=m^2c^2\dot{r}^2 + m^2c^4\left( 1-\frac{r_s}{r} \right)\left( 1+ \frac{J^2}{m^2 c^2 r^2} \right) \tag{9} 

が得られる。

次にシュヴァルツシルト時空内の楕円運動を考え、近日点移動が起こることを数式で示す。(7), (9) 式から

\displaystyle \left( \frac{dr}{d\varphi} \right)^2 = \left( \frac{\frac{dr}{d\tau}}{\frac{d\varphi}{d\tau}} \right)^2= \frac{\dot{r}^2}{\dot{\varphi}^2}

\displaystyle =\frac{m^2 r^4}{J^2}\cdot \frac{1}{m^2 c^2}\left( E^2 - m^2c^4\left( 1+\frac{J^2}{m^2 c^2 r^2} \right) \left( 1-\frac{r_s}{r} \right) \right) \tag{10}

が得られる。r_s\equiv 2r_g (重力半径)とし、u=1/r と変数変換する。

\displaystyle \frac{dr}{d\varphi} \rightarrow \frac{dr}{du}\frac{du}{d\varphi} = - \frac{1}{u^2} \frac{du}{d\varphi} \tag{11}

より

\displaystyle \left( \frac{du}{d\varphi} \right)^2=\frac{1}{J^2c^2}(E^2-m^2c^4)-u^2+\frac{2r_g m^2 c^2}{J^2}u + 2r_g u^3 \tag{12}

これを \varphi微分すると、

\displaystyle \frac{d}{d\varphi}\left( \frac{du}{d\varphi} \right)^2=2\frac{du}{d\varphi}\frac{d^2u}{d\varphi ^2}

\displaystyle \frac{d}{du}\frac{du}{d\varphi}\left( \frac{du}{d\varphi} \right)^2 

\displaystyle \left( -2u+\frac{2r_gm^2c^2}{J^2}+6r_gu^2 \right)\frac{du}{d\varphi} \tag{13} 

\displaystyle \Rightarrow = -u + \frac{r_g m^2 c^2}{J^2} + 3r_g u^2 \tag{14}

という方程式を得る。これが軌道を表す微分方程式である。通常の楕円軌道を表す微分方程式

\displaystyle \frac{d^2u}{d\varphi ^2}+u=\frac{r_g m^2 c^2}{J^2}\,\,(\equiv \frac{1}{l}) \tag{15}

であるので、3r_g u^3 の項がなければニュートン力学と一致する。この楕円を表す微分方程式の解は

\displaystyle r=\frac{1}{u} =\frac{l}{1+\epsilon \cos \varphi} \tag{16}

\displaystyle l\equiv \frac{J^2}{r_g m^2c^2} \tag{17}

\displaystyle \epsilon \equiv \sqrt{1+\frac{J^2}{{r_g}^2m^3 c^4}\left( \frac{E^2}{mc^2}-mc^2 \right)} \tag{18}

と書けることが知られている。\epsilon は離心率であり、\epsilon \lt 1 のとき楕円軌道となる。これを(14)に代入し、 \epsilon^2 の項を落とすと

\displaystyle \frac{d^2 u}{d\varphi ^2}\sim \frac{1}{l}\left( 1+ \frac{3r_g}{l}\right)+\frac{6\epsilon r_g}{l^2}\cos \varphi \tag{19}

ここで  3r_g / l\ll 1 は軌道の形をわずかに変えるだけで近日点の移動にはつながらないので無視する。この(19)の解を求めると

\displaystyle r= \frac{l}{1+ \epsilon \cos \left( \varphi - \frac{3r_g}{l}\varphi \right)} \tag{20}

が得られる。近日点は \varphi\left( 1-\frac{3r_g}{l} \right)=2\pi n\,\,(n=0,1,2,...) のときなので、一周ごとに

\displaystyle \Delta \varphi = \frac{6\pi r_g}{l} \tag{21}

だけ前進することを意味する。これが近日点移動である。

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読んでくれてあざす!!

 

 

今回のまとめ

 

① 水星だけ軌道がちょっとへん

② 重力が強い場所だと物理が狂う

③ それを考慮したものが一般相対性理論